ゲド戦記

まず最初に、こんな記事を紹介。

映画「ゲド戦記」、原作者がHPに批判的「感想」(朝日新聞
http://www.asahi.com/culture/movie/OSK200608240047.html

ゲド戦記・オリジナルサウンドトラック
こんな評判も耳に入っていたので、それなりの(?)身構えで、これまでの宮崎駿作品ではなく一介の新人監督の映画なんだと心を切り替えたつもりで、映画に臨みました。
でも、画面に出てきた絵は、コナンやナウシカの頃のような、明らかな宮崎タッチのキャラクター。おまけにジゴ坊(@もののけ姫)やクロトワ(@ナウシカ)も出てくるし・・・。もちろん、監督がキャラクターデザインを全てやらないといけないわけではないだろうけども、これではジブリ・駿のシステムをそのままつかってますよ〜と自ら宣伝しているようなもの。これではどうにも一新人作品と見るのも難しくなってしまう。
さて映像は、やはりもはや世界のジブリ。相変わらず繊細で美しい。これまでの緻密なタッチから絵画的なタッチに変えたとのことだけど、やわらかく光が溢れるような背景美術は、暖かいかんじでわるくない。
キャラクター達は先述の通りジブリのそのもので、群集はよく動くし、表情も豊か。ただ、物語が進んでもなんとなく物足りない。荒野の魔女やトトロ・ネコバスといったありえないキャラクターが生き生きと動き回る事もないし、パズーやユパ様たちほどの大立回りもない。もちろんこの辺は監督の演出・話の持って行き方次第なのだろうけど、こういったところも大きな魅力のジブリだっただけに、どうしても華がないと感じてしまう。(ドラゴンはなかなかにいい描写だけども、一体なんだったの?ってかんじだし)
そしてなにより、一番、?って感じたのは、お話そのもの、ですね、やっぱり。あれだけの時間を割いて、結局あれだけ?という内容だし。その主題も事件の背景、王子の背景なんぞぶっとばしていきなり起こり、結局ほとんど立ち入らないまま勝手に解決しちゃうし。オープニングのドラゴンの共食い、黄昏の終焉を匂わすような世界情勢、失われていく魔法使い達の力、などなど、いろんな所に伏線になるべき種はあるようなのに、それらはほとんどほかりっぱなし。例の歌は、素朴な声色で非常に印象的ではあるけど、それもどうにもとってつけたように見えてしまう。なんだかお話に絡んでいない。これでチャンチャン、といわれても、見てるオイラには、あれ?というか、えぇぇ〜?という感想しか残らないなぁ・・・。
正直、おいらにはアニメ監督に必要な資質、能力が何かは良く分かりません。画力なのか、文章力なのか、構成力なのか、それとももっと他の何かなのか・・・。でも、伝説の勇者の子孫という看板を背負ったLV1のぽっと出の勇者に、最強の剣(ジブリスタッフ)と最強の盾(TV局をはじめとした資金)を与えて、好きなように躍らせているこの作品を、他のアニメ監督や、監督を目指すアニメータ、作家達は一体どんな思いで見るのでしょうね・・・。
なんだか、そんなどうでもいいことまで考えてしまいました。偉大な父を持ち、父と同じ方向に進む2世というのは、はたして恵まれているのか、厳しいのか・・・。


私的評価:★☆ (絵はきれいでしたよ、さすがに)

ジブリ映画「ゲド戦記」に対する原作者のコメント全文(ゲド戦記wiki
http://hiki.cre.jp/Earthsea/?GedoSenkiAuthorResponse