ボウリング・フォー・コロンバイン

だいぶ前にTVでやってたのをようやく見る。


いや〜、失敗だ。吹き替えで見ちゃいかんね、これ。


マイケル・ムーアの声をあてたやまちゃん(山寺宏一)は、声質も押さえ気味な演技もいい感じ。けども、ムーアのインタビューに対する素人さんたちの答えが、完全に演技されたものになっちゃってる。答えに窮ししどろもどろになったり、なんとかごまかそうとしたりする際の台詞が、脚本どおり、演技どおりという感じでした。これじゃせっかくの突撃取材ドキュメントの魅力も1割も出てるだろうか、といったところです。
もちろん字幕でも翻訳者の意図が必ず入っちゃうし、英語での返答を聞き取れる英語力は持ち合わせてないけども、それでもしゃべる間や、口調、どもりなど、当人の感情を読み取るヒントは声の中にいくらでも潜んでる。そんな一番大事な味付けを抜いたような日本語吹き替え版は、この映画を見るにおいては全くもってオススメできませんです。


んで感想。
さすがウォルマート、ブランドイメージの危機を絶好のチャンスにしてるし。ぬかりない・・・。
華氏911のときもあったけど、日本の報道じゃまず出ないようなショッキングなシーンが印象的。とくに、1秒もなかったと思うけど、第2次大戦中だろうか、日本軍人が中国人を銃殺するシーン。ホントにこんな映像あったんだろうか。30年日本人やってて見たことなかったというのも問題あると思うし、こんな体験を語り継がれてちゃ中国人の根底に日本に対する怒り、恨みがドス黒く蔓延するのもしょうがないと思う。(まぁここ最近の暴動騒ぎは別次元の話だと思うけど。)
あと、報道が世論の不安を煽り、社会をより不健全な方向へ導いてるんじゃないかという指摘。これを、人種や貧困、銃の浸透度がアメリカと近いカナダと比較して調査してるところは興味深かった。
日本でも最近のニュースは非常に物騒で、ここ数年殺人や自殺といった報道は特に多くなったなぁと感じてました。それは取材網、通信網の発展により、今まで得られなかった事件報道がより多くされるようになったからかな、と思っていたんだけど、ひょっとしたらそれだけじゃないのかもしれない。大きな事件を伝える報道の責務ってのもあるだろうけど、問題はその伝え方。事件の特異性・凶暴性をことさら強調し不安をあおってないだろうか?「普段はおとなしくてそんな人には見えない」なんてインタビューを繰り返し流し、疑心暗鬼にさせてないだろうか?そして勘違いさんの勘違いを増長させ、新たな事件を起こすトリガーになってないだろうか?
ま、がらにもなく、こんな長文を一気に書いちゃうくらい、そんなことや他にもうだうだと考えさせる映画でありました。


にしても、銃大好きアメリカンの代表として上げられたチャールトン・へストンの扱いがちょとかわいそう。(まぁ否定できないだろうけど)


この映画全体を通して言えるけど、たとえ事実で正論であろうとも、一方通行の視点っていうのは、ちょっと怖い、かもね。それが正論で、納得・共感できてしまうものなだけに、強くそう思います。


私的評価:★★★
(字幕だったらもう1つプラスかな?)


・・・と思っていろいろ書いたんだけど、マジで書いてるのを見返すと恥ずかしいな。
要はちょっと社会的なアポなし突撃系バラエティ。電波少年と一緒です(おい)。